
目次
1.昔からある町中華に、行列ができ始めた
例えば、昔から恵比寿にある町中華の店に、
ある日、行列ができていたらどう思うだろう。
「あれ、この店って前からあったよね?」「そんなに美味しいの?」
気になって調べてみると、昔から通っている常連もいるらしい。
店先には「15周年」の飾り付け。
店側もずいぶん気合いが入っている。
でも、飾り付けだけで行列はできない。
最初に並んだ人は、なぜこの店を選んだのか。
そして、行列を見て足を止めた次の人は、何に惹かれたのか。
最近のEBiDANを見ていると、そんな架空の町中華を思い浮かべてしまう。
EBiDAN(恵比寿学園男子部)は、
スターダストプロモーションに所属する俳優・タレント
で構成された男性アーティスト集団だ。
超特急、M!LK、SUPER★DRAGONをはじめ、
いくつものグループがこの名前のもとで活動している。
「恵比寿の町中華」というたとえは、この名前から思いついた。
📖 EBiDANの所属グループや楽曲を詳しく知りたい方はこちら:
EBiDAN全10グループ・歴代全体曲&ユニット曲まとめ
私は2013年から超特急を応援している。
そのことを前から知っている友人たちが、
最近になって「勢いすごいね」「『Yes! 東京』聴いたよ」
と話しかけてくれるようになった。
超特急が突然現れたわけではない。
私が突然好きになったわけでもない。
変わったのは、周囲の反応だった。
私はEBiDANが大好きだ。
ただ、ほかのボーイズグループの現場も見てきた身として、
「EBiDANにしかない文化があるから売れた」とは思っていない。
合同コンサートも、グループを越えた交流も、
特典会も、ほかの界隈にある。
前からあったものは、それだけでは「今」の理由にならない。
どの界隈にも、それぞれの盛り上がりがある。
今、私が家を構えているのはEBiDAN村だけれど、
これはどこが優れているかを決める話ではない。
自分の村のまわりで何が起きているのかを、住人の目で確かめたい。
先に、私の仮説を書いておく。
おのおのの道を歩んできたグループの活躍が、同じ時期に重なった。
そこへEBiDAN15周年という節目が訪れ、
合同企画がそれらを「EBiDAN」という一つの名前に束ねた。
その束ね方が、以前から名前だけは知っていた人たちに、
もう一度振り向く理由を与えた。
EBiDANが急に現れたのではない。人々が、今、振り向いたのだ。
2.最初の行列は、どうやってできたのか
行列を見て足を止める人がいる。
でも、最初から行列があったわけではない。
では、誰が最初に並んだのだろう。
大きかったのは、M!LKだ。
『イイじゃん』『好きすぎて滅!』をはじめとする楽曲が話題になり、
M!LKは2025年から2026にかけて一気に注目を集めた。
一方、超特急も長い活動を経て、2026年11月25日、26日に
自身初の東京ドーム公演を控えている。
大事なのは、この二つが別々の歩みの先に生まれた出来事だという点だ。
M!LKのブレイクは、誰かが日程を決めて起こせるものではない。
一方、東京ドームは超特急が10年以上かけて積み上げてきた結果だ。
どちらか一方がEBiDAN全体を売れさせた、という単純な話ではない。
そこに、あらかじめ予定されていた出来事が重なる。
EBiDANの15周年だ。
グループの人気と、EBiDANという名前の知名度は同じではない。
『好きすぎて滅!』を知っている人が、
M!LKがEBiDANに所属していることまで知っているとは限らない。
入口が増えることと、入口同士がつながることは、別の話だ。
そのつながりを、より多くの人に見える形にしたのが、15周年の合同企画だった。
2026年7月、9グループ総勢60名による記念曲『Yes! 東京』が先行配信された。
(※CDの発売は2026年8月11日)
この曲は、10月7日発表時点でオリコン週間ストリーミングランキング通算9週の1位を獲得。
YouTubeの週間チャートでも3週連続で首位に立った。
累積ストリーミング再生回数は1億3,000万回を超えている。
出典: オリコン(2026年10月7日発表)、 オリコン(YouTube週間チャート)
私が注目したいのは、再生回数の多さそのものではない。
チャートの1位に立ったのが、
超特急でもM!LKでもなく、
「EBiDAN」という名義だったことだ。
個々のグループの活動とは別に、
EBiDANという名前がチャートの上位に現れた。
そのこと自体が、これまでとは違う景色だった。
町中華に例えるなら、
15周年の飾り付けは、それまで素通りしていた人が店に気づくきっかけにもなる。
飾り付けだけで行列はできない。
それでも、すでに人が集まり始めた店なら、
通りかかる人の目に留まりやすくなる。
予測できなかったブレイクと、予定されていた節目。
その二つが同じ年に重なり、一つの名前に束ねられた。
私の考える「なぜ今」の大きな理由は、ここにある。
3.店の存在ではなく、店を見る理由が変わった
人が振り向くきっかけは、初めて何かを知ったときだけではない。
例えば、恵比寿に町中華の店があることは、前から知っていた。
友人が「あそこ美味しいよ」と何年も言っていた。
それでもずっと、入ろうとは思わなかった。
ところが、ある日その店に行列ができている。
すると、同じ看板が昨日とは違って見える。
店の存在を知ったのではない。
店を見る理由が変わったのだ。
私の友人たちに起きたのも、これだと思う。
彼らにとって超特急は、新しく知った存在ではない。
私が13年間ずっと話してきたグループだ。
それでも、今になって話題にする理由が生まれた。
テレビで見る。SNSで流れてくる。街で広告を見かける。
EBiDANの曲がチャートの1位にいる。
一つひとつは小さな接点でも、同じ名前のもとで重なると「最近よく見る」になる。
もちろん、私の周りで起きたことだけで、
EBiDAN全体の変化を証明することはできない。
それでも、前から知っていたものが、今になって話題になる。
その変化を、私は友人たちの言葉から感じている。
こうして人々が振り向く理由は、必ずしも同じではない。
最初に店へ来た人には、それぞれの理由があった。
M!LKの曲に惹かれた人もいれば、
東京ドームへ向かう超特急を見届けたい人もいる。
一方、次に来た人は、行列そのものを見て興味を持ったのかもしれない。
人が増えるにつれて、振り向く理由も増えていく。
さらに、一度EBiDANに目を向けると、
そこから別のグループへ関心が広がることもある。
M!LKをきっかけに知った人が、
原因は自分にある。の音楽に惹かれるかもしれない。
超特急のライブから興味を持った人が、
ONE N’ ONLYのステージに出会うかもしれない。
一つのグループを見に来たつもりが、
別のグループの名前まで覚えて帰る。
最初に目を留めたグループと、その後に好きになるグループが同じとは限らない。
EBiDANという名前のもとに集まることには、そんな可能性もある。
人は、知らなかったものにだけ振り向くのではない。
知っていたものにも、もう一度振り向く。
そして、その様子がまた誰かの目に入り、次の人が足を止める理由になる。
4.数字が教えてくれること、教えてくれないこと
ただし、行列がどれほど長くなったのかを、数字だけで判断するのは難しい。
再生回数は聴いた人数ではないし、
チャートの順位は、熱心なファンの多さと、気軽に聴いた人の多さを区別しない。
1億回の中には、一人で何百回も聴いたファンもいれば、一度だけ聴いた人もいる。
「知っている」「気になっている」「好きだ」「お金と時間を使って応援している」。
この四つは、重なることはあっても同じではない。
だから私は、再生回数やチャートの順位を、
そのまま「新規ファンが増えた証拠」としては読まない。
多くの再生が積み重なったことは分かる。
ただ、それが何人の新しいファンを生んだのかまでは分からない。
行列が長くなったことと、常連が増えたことは、必ずしも同じではない。
それでも、店の前に人が集まれば、店の中の景色も変わっていく。
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5.初めての客が、常連になるまで
町中華の行列を見て足を止めた人が、全員常連になるわけではない。
一度きりの人もいれば、結局入らずに通り過ぎる人もいる。
ただ、そもそもこの店には、初めての人でも入りやすい何かがあるのかもしれない。
人が集まるきっかけと、集まった人がそこに居続ける理由は、必ずしも同じではない。
ここからは、初めて訪れる人にとっての入りやすさと、
通い続ける人にとっての居心地について考えてみたい。
老舗には老舗の面白さがある。
何十年も通う常連がいて、昔からの定番メニューがあって、
その店にしか通じない話がある。
一方で、その歴史の厚みが、
初めて訪れる人には少し敷居の高いものに映ることもある。
ボーイズグループの推し活だって、
若い頃から始めている必要はない。
大人になって初めて推しを見つける人もいる。
EBiDANは15年続いているとはいえ、まだ歴史を作っている途中にある。
2026年11月には、超特急が初めて東京ドームで単独公演を行う。
長い歴史の先にも、まだ「初めて」が待っているのだ。
その一方で、ICExやLienelのように、結成からまだ数年のグループもいる。
2026年にはiiONDOも加わった。
15年の歴史があるEBiDANの中に、
これから自分たちの歴史を積み重ねていくグループがいる。
昔のことを全部知らなくても、
今日から好きになれば、明日の出来事には立ち会える。
過去を勉強してから入る店ではなく、
これから店の歴史が増えていくところに居合わせられる店なのだ。
では、入ってみた人が、そのまま通いたくなる理由は何だろう。
私は、店の雰囲気にも一つの答えがあると思う。
EBiDANは時々、「私立男子校っぽい」と言われることがある。
BUDDiiSとSakurashimejiだけを見ても、グループの個性はずいぶん違う。
それでも、みんなが集まるエビライ(EBiDAN THE LIVE)では、
互いへのリスペクトが感じられる。
先輩後輩の関係はあっても、バチバチと競い合うより、
どこか穏やかな空気がある。
みんな、なんとなく育ちがよさそうに見える。
もちろん、これはファンの目に映る校風の話で、
メンバー同士の実際の関係までは分からない。
顔がよくて、性格もおだやかそうで、育ちがよさそう。
でも、だからといって人は好きになるだろうか。
ヤンキーが好きなオタクだっている。
「自分にはキラキラしすぎてちょっと……」と感じる人もいるだろう。
ボーイズグループの世界には、もっと野心的でギラギラした魅力もある。
私は、どちらが優れているとも思わない。
この校風は、人が集まった理由というより、
入ってみた人が居着く理由なのかもしれない。
集まる理由と、居続ける理由は別なのだ。
ただ、居心地のよさを決めるのは、グループの雰囲気だけではない。
ここからは、少し生々しい話をしたい。
ファンにとっては、応援する相手との距離の近さも、
通い続ける理由になることがある。
そして、その近さを求める人が増えれば、
ファン同士の競争が生まれることもある。
ボーイズグループの推し活には、お金と時間がかかる。
良い席で見たい。
何度も会いたい。
できれば本人に顔を覚えてもらいたい。
ファンの間では、これを「認知」と呼ぶ。
私は、その気持ちをきれいごとで片づけたくない。
同じお金と時間を使うなら、
何万人ものファンに埋もれるより、
何度も顔を合わせられる現場のほうが、
自分の存在を覚えてもらいやすいかもしれない。
もっと身も蓋もないことを言えば、
同じ承認欲求を満たすなら、
競争相手が少なく、
本人に会える機会も多い現場のほうが効率がいい。
そう考えるオタクだっているだろう。
推し活にも、一種の「コスパの良さ」があるのだ。
もちろん、好きになる相手をコスパだけで選ぶわけではない。
好きだから通うのか、
通ううちに自分の存在が届くことがうれしくなるのか。
その順番も、人によって違う。
誰もが認知を求めるわけではないし、
お金を使えば覚えてもらえる保証もない。
それでも、「応援している相手に、自分の存在が届いている」という実感が、
通い続ける理由になることはある。
オタクは、いつだって純粋な応援だけで動いているわけではない。
だがもし、この「近さ」が居心地のよさを生んでいるのだとしたら。
店が繁盛したとき、その居心地はどうなるのだろう。
6.行列ができると、常連の景色も変わる
人気が出ることは、応援している側にとってもうれしい。
大きな会場に立つ姿を見たい。
もっと多くの人に知ってほしい。
長く応援してきた人ほど、そう願ってきたこともあるだろう。
ところが、ここには皮肉なことがある。
応援しているグループが人気になるほど、ファンは増える。
それまで近くに感じていた相手が、少しずつ遠くなっていくこともある。
売れてほしいと願って応援してきたのに、
売れたことで、好きだった応援の仕方が難しくなるのだ。
私自身、それを見てきた。
2013年から超特急を応援している私にとって、
変わったのは会場の大きさだけではない。
かつてはCDを買えば参加できた特典会も、
今では抽選で当たらなければ参加できないことがある。
CDそのものの価格も、当時の1,000円前後から上がっている。
昔は、お金と時間をかければ会いに行けた。
それが今では、お金と時間をかけても会えるとは限らない。
給料はそんなに上がっていないのに。笑
もちろん、特典会の仕組みは時期や企画によって違う。
それでも、長く通っている側には、以前と同じように応援することが、
以前ほど簡単ではなくなったという実感がある。
第3章で考えた「振り向きが次の振り向きを呼ぶ」連鎖は、
行列を長くすると同時に、常連の席を遠くする。
人を集める流れは、同時に、常連の景色を変えることもある。
町中華の行列が長くなれば、いつもの席に座れない常連もいる。
一方、今日初めて店を知った人は、昔の席のことなど知らない。
その人は、その人の理由で来たのだ。
新しく振り向いた人と、長く通ってきた人では、
求めているものが違うこともある。
どちらが正しいという話ではない。
行列ができる前の店を知っている人も、
今日初めて暖簾をくぐる人も、同じ店の客だ。
ただ、同じ店にいても、見えている景色は同じではない。
おわりに.なぜ今、人々はEBiDANに振り向くのか
最初に思い浮かべた、恵比寿の町中華の話に戻ろう。
長く通う常連がいて、店は15周年を迎えた。
それぞれのメニューが評判になり、店の名前も広く知られるようになった。
気づけば、これまで店の前を素通りしていた人まで足を止めている。
最初に並んだ人と、行列を見て並んだ人。
昔からの常連と、今日初めて来た人。
店に求めるものは、それぞれ違う。
だから、人気が出たという一言だけでは、
その変化のすべてを語れない。
私は2013年から超特急を応援している。
昔からそれを知っている友人に「最近すごいね」と言われるのは、
やっぱり少し不思議だ。
私にとっては、
昨日も今日も、
ずっと好きなグループなのに。
私が13年間見てきた超特急と、
友人が今になって振り向いた超特急は、同じグループだ。
でも、見えている景色はきっと違う。
EBiDANは急に現れたのではない。
前からそこにあったものが、今、誰かの目に留まっている。
今日も、恵比寿のとある町中華の前を誰かが通りかかる。
「あれ、この店って前からあったよね?」
「最近繁盛してるよね」
そう言って足を止めた人が、
今度は誰かにその店の話をするのかもしれない。
このブログでは、超特急をもっと好きになる“入口”を作っています🚄